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なぜ種から育てるのか?・・・実生苗の有利性
樹木をふやす方法は種を蒔いて苗を得る実生繁殖法の他に、挿し木、接木、取り木、株分けなどがあります。観賞用の樹木を生産する場合は、実生以外の繁殖法が用いられることも多くあります。主な理由は、開花結実までの時間を短く出来るということにあります。また、雌雄異株の場合、確実に雄株あるいは雌株を生産したい場合にも挿し木などが用いられます。
ではなぜ種から育てる実生繁殖にこだわる必要があるのでしょうか?
それは、実生繁殖法だけが有性繁殖だからです。つまり交配によって、親の遺伝子を受け継ぎつつも新しい遺伝情報を持った個体を誕させることが出来るのです。それに対して、挿し木、接木、取り木、株分けなどはどれも、親木と全く同じ遺伝子を持った、いわばコピーということになります。
実生では、10粒の種を蒔いて、10本の苗が得られたとしたら、その10本はすべて異なった性質をもつ樹ということになります。
実生繁殖の利点
@長寿命の樹木に育てることができる。
挿し木や取り木で増やした樹木は、実生に比べて短命であることが分かっています。
A性質の違ったいろいろな苗が育てられる。
環境の変化が著しい昨今、実生繁殖によって様々な環境に適用できる樹を育てることが出来ます。
B一度にたくさんの苗が生産できる。
C直根があるため、倒れにくい樹木に育つ。
山などに植える場合、挿し木で育てた樹木には直根がありません。このため土砂災害に弱く、すぐに倒れてしまう危険があります。これに比べ、実生は直根が発達しますので丈夫な樹木に育ちます。
D種子はウイルスフリーになっている。
親株がウイルス病であっても、種子はそのウイルスに侵されていません。
E盆栽にする場合、下枝の詰まった樹形に整えやすい。
挿し木の場合枝がまっすぐ伸びやすく、針金かけも枝が固くなっているのでやりにくいです。実生苗は枝がまだ柔らかく、曲をつけやすいといわれています。
もちろん、実生の欠点もありますが、種から育てた樹はとてもいとおしく感じられて、大切にされているようです。
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